FSX後継と民間機シミュレータの選択

概要

今回はFSXの後継製品の動向について記載する。
本記事の内容は、マイクロソフトフライトシミュレータ(MSFS2020)・FSX・Prepar3D・X-Planeといった民間機シミュレータ全体動向を記載している。
※初版は2014年となる。
※2023年6月22日 動向を反映。

民間機フライトシミュレータ界の現状について

現状は下記のようになっている。スタート時点は国内で利用者が多い「マイクロソフト フライトシミュレータX」とし、移行先の観点で記載した。

独断と偏見で選ぶシミュレータ

  • マイクロソフトフライトシミュレータ2020
    安く綺麗な環境で飛びたい方向けだ。ただし本格派の旅客機アドオンはまだ少ない。PMDG B737と完全ではないが将来が見込めるA320系がある程度。
    またコンシューマ向け製品のため、実機パイロット向けの正式な訓練システムとして組み込むことはできない。2024版のリリースが発表された。
    サブスク利用以外の場合は、恐らく購入が必要と考えられる。
  • Prepar3D
    ハードウェアやソフトの組み合わせの前提はあるが、アメリカ連邦航空局に認定された環境となる。本職の訓練目的に最適。また実機と完全に同じ操作で飛行できるアドオン機体が多数リリースされている。元はマイクロソフト フライトシミュレータXの事業用版ESPが起源であるが、現在は航空機関連に限らず、陸上や海上、海底のシミュレーションプラットフォームとして利用可能となっている。学術や業務での利用にも適している。ボーイング777/747、エアバスA320を実機マニュアルベースで操作できる環境としては、本環境が適切と考える。例によって4万円ほどで1機分の環境は整えられるので費用を月数で割れば未だにPrepar3Dが勝敗が決まる。
    アメリカ軍向けと思われる特殊なアップデート内容が多い。空や飛行機の見た目ではなく戦術系訓練シミュレーションを目的としているようである。
  • X-Plane
    こちらも前提条件はあるがアメリカ連邦航空局に認定された環境となる。同じく訓練目的に最適である。
    実機と完全に同じ操作で飛行できるアドオン機体が多数リリースされている。
  • マイクロソフトフライトシミュレータX
    古いが安い。ちょっと試したい入門に最適ではあるが、2022年時点としては利用するには見た目もよろしくなく、アドオンを追加で揃えるほどでもない。飛行機の仕組みを知るためのお試しに良い程度。

 

新生「マイクロソフト Flight Simulator 2020」とは?

FSXを開発したスタジオは2009年頃に解散しており、2020年リリースされたマイクロソフトフライトシミュレータの開発はAsobo Studioが行っている。その観点から言えば、ブランド名を再興し過去の資産を再利用しやすくした実質新規のプラットフォームである。また完全にコンシューマ向けの製品である。

「綺麗な景色を自由に飛んでみたい」という場合はこの製品がお薦めだ。当サイトでも関連製品と合わせて詳細に取り扱っている。有力な機体アドオンメーカーのいくつかはこちらのプラットフォームでもリリースすることを明示している。2022年11月時点でも実機ベースの操作が可能なアドオンが少ない。この手のアドオンはどうしても開発に時間がかかったすること、SDKの変更が多く、動かない・挙動が変わるといったものも課題になっている。

 

ロッキードマーチン Prepar3Dとは?

Prepar3D v1の時点では、FSXの事業用版である”マイクロソフト ESP”とほぼ同じであった。
結果、ゲーム要素を除きほぼFSX SP2 = ESP = Prepar3D v1だ。
航空機を売る会社が訓練用として得たアセットである。その後精力的に開発が続けられおり大幅に改良されている。

2017年5月30日に64bit化されたPrepar3D V4がリリースされた。その後も継続して開発がされリリースされている。
国内ではエンスージストなフライトシミュレータファンが使用する主流と考えて良いだろう。

また2020年4月14日にはv5がリリースされた。プロフェッショナルの訓練用プラットフォームとしての位置づけがあるため、継続して機能の追加やメンテナンスが行われている。2022年11月現在はV6の開発の噂が出ているが2年に1回程度メジャーバージョンアップをしてきたため想定内と言える。ただし2023年5月にV5.4がリリースされたため、大規模な機能アップは停滞している。現在の立ち位置はフライトシミュレータではなく乗り物全般のプラットフォームのため、どちらかというと戦術シム等で使われていると想定する。

 

考えておきたいマイクロソフトのFSX箱版

FSX箱版はSteam版に移管されたことから現在は製造していない。Steam版と箱版ではマルチプレーヤー機能等一部互換性が無い。
またFSXは既に2015年にマイクロソフトのメインストリームサポートも切れている
たかだか数千円のコンシューマ向けソフトで「無償でサポートをしないのはおかしい」と騒ぐ人もいるが、10年の継続は事業としては無茶なことだ。
その事業コストは誰が払うのかという意味だが、プレステ2のソフトをプレステ4の時代(1世代5年)にサポートするかという話と同じだ。

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FSX steam版とは?

2014年12月にリリースされたFSX steam版では大きく分けて下記のような違いがある。

  • 箱版FSXでGameSpyの契約が切れて使えなくなっていたマルチプレーヤー機能が使えるようになった。
  • VisualStudio2013で再コンパイルがなされている。
    ただしランタイムは2005のままだ。コンパイラが変わっただけである。
    これで早くなると語っている人もいるが、それはほぼない。
    新しいプリンタを購入して印刷したら、文章が読みやすい内容に変わることはないのと同じだ。多少は変わるかもしれないが、プログラムのソースが変わったとは書かれていないので、原因がコードなら変わらない。
  • マルチプレーヤはsteamのものに置き換えられた。

その他詳細はこちらだが、期待するようなことは書かれていない。
しかしFSX steam版は入門用としては価格的にも最適であるのでネガティブに考える必要はないが、今後のアップデートは無い前提となる。

 

FSXからどこへ移行すべきか

筆者はPrepar3D v2がリリースされるまで、今後はX-Planeを選択するかも?と考えていた。しかしPrepar3Dを選んだ理由は唯一つ。互換性の高さだ。
FSX用アドオンで利用できないものがあるが多くがそのまま利用できるし、追加で購入するアドオンはFSXとPrepar3Dに両方対応したライセンスを選べば移行はいつでも可能だからだ。

特にPrepar3D V5でのパフォーマンスの向上、64bit化によるメモリ空間の拡大を考えればなおさらだ。このあたりは、「FSX/P3D環境のチューニング その4 メモリ不足とは」を読んでいただきたい。

この辺りを加味せずに新規にフライトシミュレータを始める人はマイクロソフト フライトシミュレータ 2020がお薦めだ。

 

Flight Sim World – FSXの後継?

dovetail gamesがFSXのSteam版を販売しているが、2015年中盤に入ってFlight Simulator 2016をリリースという公式情報が発表。
2017年5月 Flight Sim World(FSW)であり、64bit版になることが続報として告知された。そんな中2018年4月後半にFSWの凍結が発表された。事実上の終了となる。FSXの直系はPrepar3Dのみが開発を継続して残る形となる。

 

X-Planeの動向

2017年3月末、約5年ぶりに新バージョンX-Plane11がリリースされ、2022年11月現在はX-Plane12の早期アクセス版がリリースされてる。
日本のシーナリーは少ないのでFSX/Prepar3Dよりは利用者が少ないが64bitに早期に対応し全体のパフォーマンスも良いようだ。一部機体アドオンは、リアルさでも定評がある。詳細は、「X-Plane11 その1 概要」を読んでいただきたい。

 

FlyInside Flight Simulator

2017年6月に突如公表された同ソフト。
Oculus RiftやHTC ViveをFSX/Prepar3Dで利用するためのアドオンをリリースしている事で有名なFlyinsideによるものだ。ソフトはFSXの機体データと互換性があるという。DLL等の関連モジュールは不明。
グラフィックはFSXよりは綺麗だが、サードパーティがMilvizとTFDi程度しか参加していないため、筆者は数年間は有効なプラットフォームになりえないと考える。

2018年10月現在の公式動画はこちらだ。

FSX / PREPAR3D